米軍42機損耗が示す「戦争の現実」――日本は壊れた後も守り続けられるのか
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米軍の「エピック・フューリー作戦」で、少なくとも42機の航空機が損傷
米軍の「エピック・フューリー作戦」で、少なくとも42機の航空機が損傷または喪失したとする米議会調査局、CRSのレポート「Report to Congress on U.S. Aircraft Combat Losses in Operation Epic Fury」が出た。
これは、単なる戦闘機の撃墜リストではない。
戦闘機、無人機、空中給油機、早期警戒機、特殊作戦機、救難ヘリ、無人偵察機まで含む、現代戦の損耗がどれほど大きいのかを示す資料である。
今回参照したのは、米議会調査局の “U.S. Aircraft Combat Losses in Operation Epic Fury: Considerations for Congress” である。発行元はCongressional Research Service、CRS。レポート番号はIN12692、改訂日は2026年5月13日。米議会向けに作成された調査資料であり、単なるネット上の噂や匿名情報ではない。
USNI NewsもこのCRSレポートを掲載し、星条旗新聞も、イランとの戦争開始以降、少なくとも42機の米軍機が損傷または喪失したと報じている。
ただし、この42機という数字は、国防総省が公表した完全な公式損害一覧ではない。公開報道、国防総省や中央軍などの発表、各種報道をもとに、CRSが議会向けに整理したものである。つまり、「これが全損害で確定」というより、「公開情報から少なくともここまで見える」という数字だ。この点だけは理解していただきたい。公式資料としては、まだ変わる可能性はある。
それでも、42機だ。これは、イラン側からの攻撃だけではなく、友軍の攻撃により被弾したり、基地内をドローンで攻撃された結果の損傷も含まれる。
具体的な損傷報告

CRSレポートを参考にAIで画像生成したイメージ図。実際の機体とは違う場合があります。
F-15E Strike Eagle 4機
・3機は、2026年3月2日にクウェート上空で友軍誤射により撃墜・破壊。搭乗員6名は脱出し回収。・1機は、2026年4月5日にイラン上空での戦闘作戦中に撃墜・破壊。搭乗員2名は別々の捜索救難作戦で回収。
F-35A Lightning II 1機
・2026年3月19日の報道で、イラン上空での戦闘作戦中にイラン側の地上射撃により損傷と報告。
A-10 Thunderbolt II 1機
・2026年4月3日、敵火により被弾。その後、捜索救難作戦中に墜落・破壊。パイロットは脱出し回収。
KC-135 Stratotanker 7機
・2026年3月12日、友軍空域上で2機が事故に関与。1機はイラクで墜落し、搭乗員6名全員が死亡。もう1機は地域内の非公表地点に緊急着陸。・さらに5機は、サウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地で、イランのミサイル・ドローン攻撃により地上で損傷。
E-3 Sentry / AWACS 1機
・2026年3月28日の報道で、サウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地において、イランのミサイル・ドローン攻撃により地上で被弾・損傷。・5月7日の報道では、このE-3は無防備な誘導路上に駐機していたとされる。
MC-130J Commando II 2機
・撃墜されたF-15Eの捜索救難作戦を支援中、イラン国内で離陸不能となり、地上で意図的に破壊。搭乗員は全員退避。
HH-60W Jolly Green II 1機
・撃墜されたF-15Eの捜索救難作戦を支援中、イラン国内で小火器による射撃を受け損傷。
MQ-9 Reaper 24機
・2026年4月9日の報道で、米軍はイランへの軍事作戦開始以降、24機のMQ-9リーパーを喪失したと報告。
MQ-4C Triton 1機
・2026年4月14日の報道で、米海軍文書を引用し、事故により墜落したと報告。
作戦費用は290億ドル(4兆6000億円)と議会証言
作戦費用も大きい。米国防総省の当局者は、イランでの軍事作戦費用が290億ドルに増えたと議会で証言したとされる。1ドル159円で計算すれば、日本円で約4兆6000億円だ。
しかも、この金額には、イラン側の報復攻撃で損害を受けた中東の米軍基地の被害は含まれていない。つまり、これは「全部込みの戦争コスト」ではない。見えている範囲の作戦費用と、装備の修理・交換などを中心にした数字だ。
特に目立つのが、MQ-9リーパー無人機の損失だ。
CRSレポートでは、米軍が24機のMQ-9を喪失したと整理されている。MQ-9は、一般に「無人機」というカテゴリーなので安価な消耗品のように見られがちだ。しかし、実際には高性能なセンサー、通信装置、兵装を搭載した重要な戦力だ。
1機あたり約3000万ドルとすれば、24機で7億2000万ドル。1ドル159円で計算すれば、約1145億円になる。無人機だけで1000億円を超える損失である。 「無人機だから安い」「無人機だから人命被害が少ない」という単純な話ではない。
現代戦では、無人機も高価な情報収集・攻撃・監視のプラットフォームである。それが大量に失われれば、軍事的にも財政的にも大きな損耗になる。
損害はMQ-9だけではない。F-15Eストライクイーグル、F-35AライトニングII、A-10、KC-135空中給油機、E-3セントリー、MC-130J特殊作戦機、HH-60W救難ヘリ、MQ-4Cトライトンなど、さまざまな機体が損傷または喪失したと報告されている。
この一覧を見ると、現代戦の損耗は、「前線で戦う戦闘機」だけにとどまらない。
●空中給油機が損傷すれば、長距離作戦の継続が難しくなる。
●早期警戒管制機が損傷すれば、空域全体の把握や指揮統制に影響が出る。
●救難ヘリが被弾すれば、撃墜された搭乗員の救出能力が損なわれる。
●特殊作戦機が使えなくなれば、救出、潜入、回収、支援任務にも穴が開く。
●無人機が大量に失われれば、監視と攻撃の持続性が落ちる。
つまり、戦争の損害とは、損傷した戦闘機の数だけでは分からない。
燃料を運ぶ機体、救助に向かう機体、偵察する機体、空の状況を把握する機体、特殊任務を支える機体、それらすべてが損耗する。基地、滑走路、港湾、燃料、弾薬、整備員、通信網、補給網までもが傷ついていく。
日本は戦時損耗まで考えているのか?
日本ではよく、「防衛費が高い」「装備が高い」「戦闘機が高い」という議論が出る。しかし、実際の戦争では、装備は買って終わりではない。持っているだけでは戦力にならない。壊れる。落ちる。撃たれる。修理が必要になる。代替機が必要になる。部品が必要になる。整備員が必要になる。燃料も弾薬も必要になる。そして、それらを運ぶ輸送力も必要になる。
つまり、防衛力とは、装備を保有することだけではない。
損耗した後、それでも任務を続けられる力である。 日本の場合、航空機や輸送機、艦艇が損傷したとき、その後どうやって任務を続けるのかが重要だ。その議論が日本では十分に表に出ているとは言い難い。
日本は「戦争をすること」を前提にしている国ではない。だから、航空機が何機失われたらどう補充するのか、輸送機が使えなくなったら誰が何を運ぶのか、艦艇が損傷したらどこで修理し、どれくらいで戦列に戻せるのか、そういう話は政治の場でもメディアでも語られにくい。 しかし、有事とは「一度戦って終わり」ではない。 航空機が失われた翌日も、警戒監視は続けなければならない。領空侵犯への対応も必要になる。周辺海域の監視も必要になる。住民避難や物資輸送も必要になる。
基地が攻撃されれば、滑走路の復旧、燃料の再補給、弾薬の再配置、通信網の維持も必要になる。 つまり、有事とは、損耗した状態で、なお任務を続ける状況である。
日本で同じような損耗が起きたらどうなるのか。 ここが、本当の継戦能力の問題である。 日本の安全保障議論では、防衛装備を持つか持たないか、反撃能力を持つか持たないか、武器輸出を認めるか認めないか、という議論はよく行われる。しかし、実際に損耗した後、任務を継続できるのかという議論は弱い。ここを見ないまま「抑止力」だけを語ると、見た目の防衛力だけが整って、実際には続かない防衛になってしまう。 戦争を望むか望まないかとは別に、国を守るということは、損耗を前提に考えることでもある。
YouTubeライブでの解説はこちら
昨夜のライブでこの内容をさらに詳しく解説しています。ぜひこちらもどうぞ。
米軍はイラン作戦で42機損耗 日本なら警戒監視を続けられるのか https://www.youtube.com/live/lDCjjmlgIOw?si=CAGrw894LZSgCDAP
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