ミサイル90%破壊の意味 トランプ会見が示した対イラン軍事戦略

・米軍とイスラエル軍による作戦「Operation Epic Fury」
・イランのドローン発射装置は83%、ミサイル発射装置は90%以上減少
・B-2爆撃機による地下施設攻撃
・核施設攻撃作戦で主要核施設三か所を破壊
・ホルムズ海峡の安全確保
・エネルギー市場安定ー政治リスク保険を検討
小笠原理恵 2026.03.10
誰でも

3月9日のホワイトハウスでの記者会見の内容 President Trump Holds a Press Conference, Mar. 9, 2026

トランプ大統領が米議会で一般教書演説を行う様子(Official White House Photo by Daniel Torok)

トランプ大統領が米議会で一般教書演説を行う様子(Official White House Photo by Daniel Torok)

トランプ大統領会見 イラン攻撃の進捗状況

ホワイトハウスで行われた記者会見で、トランプ大統領は米軍とイスラエル軍による対イラン軍事作戦の成果を強調し、イランのミサイルおよびドローン能力が大幅に低下したと述べた。大統領によれば、これまでに5000以上の軍事目標が攻撃され、イラン軍の主要戦力は大きく弱体化しているという。

大統領は、米軍とイスラエル軍が実施している作戦「Operation Epic Fury」が開始から9日間で大きな成果を上げたと説明した。特にイラン海軍の戦力について「ほぼ完全に破壊された」と述べ、約50隻以上の艦艇が撃沈されたと語った。また、ドローンやミサイル関連施設への攻撃も続いており、イランのドローン発射装置は83%、ミサイル発射装置は90%以上減少したと説明した。

ミサイルとドローン発射装置が重要な戦術ポイントと認識

トランプ大統領は、今回の作戦では発射装置の破壊が重要な戦術となっていると述べた。米軍は監視システムによってミサイル発射地点を特定し、発射後数分以内に発射装置を攻撃する能力を持っているという。「ミサイルが発射されると五分以内に発射装置を破壊できる」と大統領は語り、米軍の情報能力と精密攻撃能力の高さを強調した。

さらに、大統領はB-2ステルス爆撃機による攻撃についても言及した。B-2爆撃機は2000ポンド爆弾を使用して地下施設を攻撃し、イランのミサイル基地や軍事施設を破壊したという。地下深くに設置された施設についても「土壌は防御にならなかった」と述べ、地下施設への攻撃能力を示した。

トランプ氏はまた、イランの軍事能力を長期的に低下させるため、発射装置だけでなく製造拠点の破壊も進めていると説明した。ドローンやミサイルを製造する施設が次々と攻撃されており、軍事生産基盤そのものを破壊することが作戦の目的だという。

今回の作戦についてトランプ氏は「当初の予定よりはるかに早く進んでいる」と述べた。大統領は「1カ月後にこの状況に到達すると考えていた人は少なかった」と語り、軍事作戦が予想以上に早く成果を上げているとの認識を示した。

まだ残された攻撃目標があるー必要がなければ攻撃しない

一方で、トランプ氏は現在の作戦について「軍事目標はほぼ達成されている」との認識も示した。電力施設などイランの国家インフラに対する攻撃能力は残されているものの、「必要がなければ攻撃しない」と述べ、状況を見極めながら対応する考えを示した。

また、今回の作戦では防空システムも重要な役割を果たしたという。トランプ氏はパトリオットミサイルの迎撃能力を高く評価し、「驚くべき技術だ」と語った。多数のミサイルが発射されたものの、その多くが迎撃されたとしている。

今回の会見は、イランに対する軍事作戦の成果を国内外に示すとともに、核開発阻止の必要性を改めて強調する内容となった。

米国のイランへの軍事行動の正当性について

トランプ大統領は会見の中で、今回の軍事行動の正当性についても強調した。大統領は、イラン政権が1979年の革命以来「47年間にわたりアメリカ人を攻撃し続けてきた」と述べ、イラク戦争以降に米兵が直面してきた路上爆弾(IED)攻撃などにも言及した。大統領は「多くの兵士が命を落とし、ある者は手足を失い、顔に深刻な傷を負った」と語り、イランが長年にわたりテロ活動を支援してきたと批判した。

さらにトランプ氏は、イランとの核交渉についても厳しい認識を示した。大統領によれば、米国側は民生用原子力のための核燃料を提供する提案を行ったものの、イランはそれを拒否したという。「彼らは核燃料を望んでいたのではない。核兵器を作りたかったのだ」と述べ、イランが核兵器開発を放棄する意思を示さなかったと主張した。

Operation Midnight Hammer(主要核施設攻撃作戦)

トランプ氏は、米軍が実施した「Operation Midnight Hammer」によってイランの主要な核施設三カ所を破壊したと説明した。しかし同時に、イランが別の場所で核開発を再開しようとしていたとも述べた。その施設は花崗岩層の地下に建設され、さらに深い地下施設として計画されていたという。

トランプ氏は、米国側が民生用原子力のための核燃料を提供する提案を行ったものの、イランはそれを拒否したと主張した。「彼らは核燃料を望んでいたのではない。核兵器を作りたかったのだ」と述べ、イランが核兵器開発を続ける意思を持っていたと批判した。

大統領は「もし我々が行動しなければ、イランは核兵器を保有していた可能性が高い」と語り、軍事行動の必要性を強調した。

また大統領は、イランが核開発と並行して弾道ミサイルの増強を進めていたとも指摘した。こうしたミサイルは中東の米軍基地を脅かすだけでなく、将来的には米本土にも到達する可能性があったと述べている。今回の軍事作戦では、多数のミサイルが破壊されたか迎撃されたとし、米軍のパトリオット防空システムが大きな役割を果たしたと強調した。

中東エネルギー安全保障問題

会見後の記者質問では中東地域のエネルギー安全保障にも言及した。

トランプ大統領は、ホルムズ海峡の安全確保が今回の軍事作戦の重要な目的の一つだと述べた。ホルムズ海峡はペルシャ湾とインド洋を結ぶ世界有数のエネルギー輸送ルートであり、多くの中東産原油がここを通過して世界各地に輸送されている。

Googleマップ

Googleマップ

トランプ大統領は、イランが海峡の航行を妨害する可能性について強く警告し、「もしそのような行動があれば、これまでにないほど強い軍事的対応を行う」と述べた。また米海軍が海峡周辺に多数の艦艇を展開していることを明らかにし、必要に応じてタンカーを護衛する体制を整えていると説明した。

さらにトランプ氏は、戦争によるエネルギー市場への影響を抑えるため、湾岸地域を航行するタンカーに対して政治リスク保険を提供する方針を示した。これは軍事衝突による航行リスクを軽減し、石油輸送を維持することを目的とした措置だという。

エネルギー市場への影響抑制について

大統領はまた、ホルムズ海峡の安全はアメリカだけでなく世界経済全体に関わる問題だと指摘した。特に中国をはじめとするアジア諸国は中東原油への依存度が高く、「我々は世界のエネルギー供給を守っている」と強調した。

トランプ氏は原油価格の安定にも言及し、石油市場の混乱を避けるため一部の石油関連制裁を緩和する可能性があることも示唆した。今回の軍事行動はイランの核開発阻止だけでなく、世界のエネルギー供給を守る目的もあると説明している。

米国は中国のためにも海峡を守っている 記者質問に答えて

EIA estimates that 76% of the crude oil and condensate that moved through the Strait of Hormuz went to Asian markets in 2018

EIA estimates that 76% of the crude oil and condensate that moved through the Strait of Hormuz went to Asian markets in 2018

トランプ大統領の会見は記者の質問に答えた言葉のほうが面白いのでそれをいくつかご紹介しましょう。

たとえばこれ。

“it doesn't pertain to us so much as it does to China”

米国は中国のためにも海峡を守っていることになる。

これはちょっとした中国への皮肉を含んでいます。

  • 米国は軍隊を派遣してホルムズ海峡を守っている

  • しかし本当に依存しているのは中国

  • だから米国は「中国のエネルギー供給を守っている」面もある

イランに石油を依存しているのは中国だ。ホルムズ海峡を通過する石油の約84%はアジア向けであり、中国、インド、日本、韓国の四カ国が主要な輸入国となっている。

EU諸国や米国はこのホルムズ海峡を通るルートではなく紅海を通るルート等の別ルートで石油を輸入しています。海峡封鎖リスクからもうすでに離れているわけです。その中国はイランと「包括的パートナーシップ」関係で経済・安保両面で協力する実質的な連携関係にある。しかし、これは共に戦う義務をもつ同盟とは違う。

ベネズエラの時もそうだが、中国は不気味なほど静かだ。これには前置きになる事象がある。また別の記事で説明したい。

著者撮影

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