コンテナから18機、電波妨害が効かないドローン――ユーロサトリ2026が示した「次の戦争」
ドローンは「空飛ぶカメラ」から、偵察・攻撃・迎撃・電子戦を担う消耗型兵器へ変わった
ドローンと聞くと、上空から映像を撮影する小型機を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、2026年6月にパリで開かれた世界最大級の防衛・安全保障展示会「ユーロサトリ2026」で目立ったのは、偵察用ドローンそのものよりも、ドローンを大量に運び、発射し、攻撃に使用し、さらに敵のドローンを迎撃するための装備でした。
現在の戦場では、「高性能なドローンを何機持っているか」だけでは足りません。どれだけ安く大量に生産できるか、電波妨害の中で飛ばせるか、失っても補充できるか、敵のドローンを安価に撃ち落とせるかまでが、一つの戦力として問われています。
ユーロサトリは、パリで2年に一度開かれる陸上・航空防衛分野の国際展示会です。2026年は2,100を超える企業・団体が参加し、500以上の新製品が発表される規模となりました。
参考動画はそのユーロサトリの公認ジャーナリストの照井資規氏のインタビュー動画です。公認ジャーナリストは日本では3人しかいません。
ドローンは一部の特殊部隊だけが使う装備ではなく、砲弾や無線機、車両と同様に、部隊全体へ大量に組み込まれる段階に入っています。そして、ドローンだけが飛び交う戦場(キルゾーン)がウクライナでは当たり前のように存在します。
トラックのコンテナから18機を発射する
象徴的だったのが、ドイツのラインメタルが世界初公開した「CML」です。CMLとはContainerized Missile Launcher、コンテナ型発射装置のことです。
外形は一般的な20フィート輸送コンテナで、トラック、鉄道、艦船などで運べます。内部にはFV-014と呼ばれる徘徊型弾薬を18機収容します。徘徊型弾薬とは、発射後すぐに目標へ飛び込む通常のミサイルとは異なり、目標地域の上空を飛行しながら捜索・監視し、目標を発見すると攻撃に移る無人機です。
FV-014についてラインメタルは、最大航続距離100キロ、飛行時間最大70分と説明しています。偵察と攻撃を一つの機体で行い、砲兵が届きにくい場所にも比較的短時間で火力を送り込むことを想定しています。
18機という数字にも驚きますが、発射装置を標準的なコンテナに収めることで、専用車両に固定せず、平時には通常の物流手段で輸送し、必要な地域に到着してから展開できます。複雑な形ではなくシンプルな形に折りたためることが大事です。
コンテナ単位で補充・交換できるため、発射装置そのものを前線で一機ずつ整備する負担も軽くなります。
従来の兵器は、専用の発射車両、専用の整備施設、専用の輸送手段を必要とするものが多く、装備が高性能になるほど、輸送と整備も大掛かりになりました。CMLは反対に、「どこへでも運べる箱」に多数の攻撃手段を収めています。ドローンの小型化だけでなく、輸送、保管、補充、発射までを簡略化することが設計の中心にあるのです。
照井氏は最近のドローンは日本人がフィットネスでつかう「ストレッチポール」くらいの大きさのものに折りたためると言っていました。積み込みしやすい形状になったのは、それだけ消耗が激しく、輸送しやすく進化したためでしょう。

コンテナ型ランチャー・車両防護ネット・光ファイバーFPVの説明用イメージ。実際の展示品写真ではありません 著者AIで参考画像を生成
電波妨害が効きにくい「光ファイバーFPV」
ウクライナの戦場では、操縦者が機体カメラの映像を見ながら飛ばすFPVドローンが大量に使われています。FPVとはFirst Person View、操縦者がドローンの視点で飛行させる方式です。
通常のFPVドローンは、操縦命令と映像を電波で送ります。このため、強い妨害電波を浴びせて通信を切断する「ジャミング」が有効な対策となってきました。ところが、その対策を回避するために登場したのが光ファイバーFPVです。
画像の例をみてください。
機体後部のリールから細い光ファイバーを繰り出し、操縦者とドローンを物理的な線で結びます。電波を使わないため、一般的な無線ジャミングでは操縦回線や映像回線を切断しにくいのが特徴です。一方で、光ファイバーの重量、地形や樹木への引っ掛かり、飛行距離などの制約もあります。万能ではありませんが、「妨害電波を出せばドローンを止められる」という前提を崩したことは確かです。
ユーロサトリ2026では、電子戦環境を前提として、無線通信と光ファイバー通信を組み合わせ、通信が妨害された場合に回線を切り替える戦術ドローンも発表されました。
また、光ファイバー型を含むドローンへの対処を掲げる迎撃システムも登場しています。戦場で対策が生まれると、その対策を破る装備が作られ、さらにそれを迎撃する装備が開発されます。ドローンをめぐる技術革新は、この循環でカ月単位で進んでいます。
車両の外側に「もう一枚の防護」を付ける
画像中央の車両防護ネットは、接近してくるFPVドローンを、車体に直接衝突する前に止めるためのものです。戦車や装甲車の外側に金属製のケージ、金網、ネットなどを取り付け、弾頭を車体から離れた位置で作動させたり、プロペラを絡ませたりします。
この網の名前は、ケージ装甲、スラット装甲、トップアタック防護スクリーンなどと呼ばれます。見た目は極めて原始的です。しかし、安価なFPVドローンによって高価な戦車や装甲車が破壊される戦場では、数百万円、数千万円の電子装置だけでなく、物理的な網やケージが再評価されています。
もちろん、このネットだけですべてのドローンを防げるわけではありません。上面、側面、後部、ハッチ、エンジン周辺などに隙間があれば、操縦者はそこを狙います。大型弾頭や複数機による連続攻撃にも限界があります。それでも、車体に直接命中する確率を下げ、乗員が退避する時間を作るという意味があります。
これは、防御の考え方が「一つの高度な装備で完全に守る」ことから、レーダー、電波妨害、迎撃ドローン、機関砲、ネット、装甲を何層にも重ねる方向へ変わっていることを示しています。
ドローンを迎撃するのもドローン

敵のドローンを撃ち落とすために高価な地対空ミサイルを使い続ければ、攻撃側より防御側の方が先に資金と弾薬を失います。そこで急速に増えているのが、ドローンをドローンで迎撃する発想です。
高速迎撃ドローンは、レーダーや光学センサーで発見された敵機へ接近し、体当たりや爆発によって破壊します。ユーロサトリ2026では、自律的に目標を追跡して衝突する迎撃ドローンや、センサー、指揮統制装置、迎撃機を商用バンや車両にまとめたシステムが発表されました。シャヘド型の一方向攻撃無人機を対象とした「hit-to-kill」、つまり直撃方式の迎撃機も示されています。
ただし、迎撃ドローンも一機一機を人間が操縦していては、大量攻撃に追いつきません。レーダーでの探知、目標の識別、迎撃機への割り当て、飛行経路の計算を自動化し、一人の操作員が複数機を管理する必要があります。
ここでAIが使われます。AIは「勝手に人を攻撃する技術」ではありません。最終決断は人間がします。ただ、高速で飛ぶ小さな目標をカメラ映像から見つけ、背景と区別し、衝突コースを計算する作業等に使われます。
ユーロサトリで示されたのは、AIがドローン単体の性能を上げるだけでなく、探知装置、指揮統制、迎撃装備をつなぐ部分へ入り始めたことです。
一機を落とすのではなく、群れを止める
大量の小型ドローンが同時に飛来すれば、迎撃ドローンや機関砲だけでは処理しきれない可能性があります。そこで注目されているのが、高出力マイクロ波、HPMです。
HPMは、強力な電磁エネルギーを照射し、ドローンの通信装置や飛行制御装置などの電子回路を妨害・故障させる技術です。一機ずつ弾を命中させるのではなく、一定範囲に作用させ、複数のドローンを同時に無力化する考え方です。
ただし、画像にある「空飛ぶマイクロ波兵器」は将来像を示した説明用イメージであり、すでに一般的な実用装備として大量配備されているという意味ではありません。実際には、必要な電力、装置の重量、照射距離、味方の電子機器への影響、電磁的に防護された機体への効果など、解決すべき問題があります。
もう一つの手段が空中炸裂弾です。目標へ直接弾を当てるのではなく、設定した位置で弾を炸裂させ、多数の破片を広げて小型ドローンを破壊します。ラインメタルはユーロサトリ2026で、ドローン防御にも使用できる中口径機関砲と空中炸裂弾への対応を示しました。
さらに、より大型の無人機や車両、無人艇を「母機」として、小型FPVドローンを目標地域の近くまで運び、そこで放出する構想も進んでいます。小型機自身の航続距離を伸ばさなくても、母機が危険地域の手前まで運べば、より遠方へ多数の機体を送り込めます。
【画像2:高速迎撃ドローン、HPM、空中炸裂弾、ドローン母機の概念を示す説明用イメージ。すべてが同一の完成装備として展示されたという意味ではありません】
ドローンは「何を積むか」で別の兵器になる

ドローンの機体だけを見ても、その任務は分かりません。重要なのが「ペイロード」です。ペイロードとは、カメラ、センサー、通信装置、物資、弾頭など、その任務のために搭載するものを指します。
同じ機体でも、高性能カメラを積めば偵察機になります。通信装置を積めば中継機、電波発信器を積めば敵の位置を探る電子戦機、反射器を積めばレーダー上で別の目標に見せる囮になります。弾頭を積めば攻撃用ドローンに変わります。
攻撃用弾頭にも違いがあります。HE破片弾頭は、爆発と破片で人員や非装甲車両を攻撃します。HEAT成形炸薬は、爆発エネルギーを集中させて装甲を貫きます。タンデムHEATは二段階で作動し、最初の弾頭で爆発反応装甲を作動させ、後続の弾頭で本体装甲を攻撃します。EFP・自己鍛造弾は、爆発によって金属板を高速の塊へ変形させ、車両や陣地を攻撃するものです。
熱圧・爆風型、焼夷、発煙、地雷・投下弾、電子戦装置、囮なども考えられます。ただし、化学物質や薬理作用剤を人に対して散布する兵器は、通常の弾頭選択の延長として扱えるものではありません。化学兵器禁止条約をはじめとする国際法上の重大問題になります。画像も、その使用を紹介・推奨するものではなく、別の法的カテゴリーとして警告するために区分しています。
【画像3:弾頭・ペイロードの違いを説明するためのイメージ図。特定企業の展示内容や採用装備を示すものではありません】
日本はようやく「大量運用」を概算要求に
小型攻撃用UAVの取得に363億円+事項要求、迎撃UAVの取得に76億円+事項要求を計上し、従来のモジュール型UAVに攻撃機能を付与する検証も行います。長時間にわたって広域監視を行うMQ-9Bも、令和8年度の4機から令和9年度は17機の取得要求へ大幅に拡大しました。
さらに注目すべきなのが、民生部品や民間の設計・製造技術を使い、「安価で短期間に大量生産可能な」低コストのスタンド・オフ防衛用UAVを実現すると明記した点です。日本も、少数の高性能機を長期間かけて調達する従来型の装備行政から、安価な無人機を短期間で量産し、損耗を前提に運用する体制へ転換しようとしています。
ただし、これは大量生産体制がすでに完成したという意味ではありません。小型攻撃用UAVを何機取得するのか、月産能力は何機か、主要部品を国内で供給できるのか、通信・GPS妨害下でどこまで機能するのかは公表されていません。日本は「研究と少数導入の入口」からは前進しましたが、ユーロサトリで示されたコンテナ型大量発射、電子戦環境への適応、迎撃システムとの統合に匹敵する運用・生産体制を築けるかは、これからの課題です。
機体を買うだけでは「ドローン戦力」にならない
ユーロサトリ2026と日本の概算要求を比べると、日本の方針にも、偵察、攻撃、迎撃、海上・水中無人機、多数機管制という項目は並んでいます。書類上の方向は、世界の動きから外れてはいません。
しかし、戦力として重要なのは項目数ではありません。
通信やGPSを妨害されても飛べるのか。光ファイバー型を含む敵ドローンをどう発見するのか。一人で何機を管理できるのか。失われた機体を月に何機補充できるのか。バッテリー、モーター、半導体、フライトコントローラーを国内で確保できるのか。前線で修理し、戦場から得た情報をすぐにソフトウェアや機体へ反映できるのか。
ウクライナで生まれた装備は、完成された最終製品というより、使用と損耗と改修を繰り返しながら変化しています。ユーロサトリで目立ったのも、一機の豪華な無人機ではなく、大量発射、通信妨害への耐性、迎撃、指揮統制、輸送の簡略化など、「大量に使い続けるための仕組み」でした。
日本が本当に追いつくために必要なのは、「国産ドローンを何機購入した」という発表だけではありません。使えば失われる装備を継続的に作り、部隊で修理し、数週間・数カ月で改修し、敵の変化に合わせて更新する産業と運用の循環です。
ユーロサトリ2026が示したのは、未来の夢の兵器ではありません。ドローンがすでに主役となった戦場に、各国の企業と軍がどれほどの速度で適応し始めているかという現実です。日本も方向転換を始めました。しかし、その速度と量産体制まで世界水準に届いているかは、これから厳しく検証しなければなりません。
すでに登録済みの方は こちら

