百田尚樹氏に55万円の賠償命令「逆恨みの怨念系」と投稿 本間奈々氏勝訴!

日本保守党代表で参議院議員の百田尚樹氏が、本間奈々氏を「擦り寄ってきた」「怨念系」「粘着」などと表現したX投稿をめぐる訴訟で、東京地裁は本間氏の請求を一部認め、55万円の支払いを命じました。公党の党首による発信は、単なる批判の範囲だったのか。本稿では問題の投稿と裁判の経緯を整理します。YouTube「風読みサロン」でも解説しています。続報も書きますので読者登録、サポメン登録もお待ちしてます。
小笠原理恵 2026.09.26
誰でも

本間奈々氏の一部勝訴が問う批判者へのレッテル貼り

2026年9月25日、東京地方裁判所は、本間奈々氏が百田尚樹氏に損害賠償を求めた訴訟で、百田氏に55万円と遅延損害金の支払いを命じました。請求額330万円の全額が認められたわけではなく、本間氏のそのほかの請求は棄却されています。その意味では一部勝訴です。しかし、訴えそのものが退けられたのではありません。百田氏に金銭の支払いを命じる判決が出たことは明確です。

告訴のもととなった百田氏の投降

告訴のもととなった百田氏の投降

争われたのは、百田氏がXに投稿した「日本保守に擦り寄ってきた」「私たちが受け入れなかったら、その後、凄まじい粘着で中傷を始めた」などの表現でした。本間氏は、日本保守党の党員になったことも、公認候補にしてほしいと求めたこともなく、百田氏が投稿で持ち出した「直筆の手紙」も送っていないと反論していました。

判決文はまだ本間氏の手元に届いていません。したがって、裁判所が二つの投稿のどの表現を、どのような理由で違法と判断したのかは、現時点では断定できません。ただし、判決理由がまだ分からないことと、百田氏に55万円の賠償命令が出た事実は別です。

*本間奈々チャンネルで、本間さんも裁判について放送しています。ぜひこちらもご覧ください。

発端となった二つの投稿

訴訟の発端は、2025年3月18日から19日ごろに百田氏が行った二つの投稿です。訴状の抜粋によると、最初の投稿には次のように書かれていました。

うーん・・・日本保守党は、「江東区の選挙」に関しては、「逆恨みの怨念系」に呪われているなあ。あと、江東区には関係ないが、日本保守に擦り寄ってきた本間某という女性も、私たちが受け入れなかったら、その後、凄まじい粘着で中傷を始めた。

本間氏が「それは私の事ですか? 受け入れるも何も党員でも何でもありませんが」と反論すると、百田氏はさらに投稿しました。

「擦り寄ってきた」という言い方はやや表現が行き過ぎたかもしれません。失礼しました。しかし本間さんは、何度も私に対して、熱い応援エールを送ってこられましたよね(いきなりのDMで驚きました)。日本保守党を支持してくださる旨の直筆のお手紙も送ってこられましたよね。お返事を返さないで失礼しました。

一見すると、二つ目の投稿は「擦り寄ってきた」という表現をわずかに修正したようにも見えます。しかし、その後に「何度も」「熱い応援エール」「直筆のお手紙」と重ねることで、本間氏が百田氏や日本保守党へ強く接近していたという印象は、むしろ補強されています。

訴状では、二つの投稿を通常の読者が読めば、本間氏は百田氏や日本保守党に加わろうとして拒否され、その逆恨みから執拗な中傷を始めた人物だという印象を受けると主張しました。訴状によれば、最初の投稿は2025年3月19日午前1時10分の時点で48万回、二つ目も同日午前10時46分の時点で41万4000回表示されていました。

応援したことと擦り寄ったことは同じではない

本間氏は、日本保守党を応援するDMを百田氏に送ったこと自体は認めています。しかし、政党や候補者を応援したことと、その党への参加や公認を求めて「擦り寄った」ことは同じではありません。

政治家や政党を一時期応援していた人が、その後の言動に疑問を持って批判へ転じることもあります。その批判に反論するのであれば、発言のどこが事実と異なるのか、どの資料に照らして誤りなのかを示せばよいはずです。批判者について「本当は仲間に入りたかった」「拒否された逆恨みだ」という物語を作れば、政策や事実をめぐる議論は、その人の動機や人格をめぐる攻撃へとすり替わってしまいます。

しかも、百田氏は著名な作家であり、日本保守党代表です。現在は参議院議員でもあります。同じ言葉でも、数十万人のフォロワーを持つ政党代表が発信すれば、その拡散力と相手に与える影響は一般の個人とは異なります。本間氏は、投稿によって「日本保守党に接近したが受け入れてもらえず、逆恨みで攻撃を始めた人物」という印象が広がり、その後、多数の攻撃を受けたと説明しています。

50万円の解決案から55万円の判決へ

本間氏は判決後のライブ配信で、判決前に裁判所から、百田氏が50万円を支払って解決する案が示されていたと説明しました。通常の訴訟手続きであれば、裁判所による和解勧告または和解案に当たると考えられます。

本間氏側が重視したのは金銭だけではありませんでした。「日本保守党へ擦り寄った」「直筆の手紙を送った」とする発信が事実ではなかったことを認めるよう求め、途中からは謝罪までは求めないと譲歩したものの、和解には至らなかったといいます。その結果、判決では55万円の支払いが命じられました。

和解案の50万円と判決の55万円を単純に比べて、増額になっています。

「和解を拒否した罰として5万円増額された」とはいえません。55万円の内訳も、現時点では分かっていません。しかし、和解を拒否した結果、判決では増額されていたというのは事実です。

過去にも発信をめぐる賠償命令

百田氏の著作やSNS発信をめぐって賠償命令が出たのは、今回が初めてではありません。

2018年には、やしきたかじん氏の闘病生活を扱った書籍『殉愛』をめぐり、元マネジャーの名誉を傷つけたとして、東京地裁が百田氏と出版元の幻冬舎に計275万円の支払いを命じました。裁判所は、元マネジャーを能力に欠け、金に汚い人物として描いた記述について、裏付けを欠く部分が少なくないと判断しました。

津田大介氏が百田氏のX投稿をめぐって起こした訴訟では、東京地裁が30万円の支払いを命じ、2023年12月の東京高裁判決は賠償額を50万円へ増額しました。高裁は、百田氏が著名な作家でフォロワーも多いことから、投稿の違法性の程度は低くなく、津田氏が受けた精神的損害も軽視できないと指摘しています。

それぞれ当事者も争点も異なるため、三つの訴訟を単純に同一視することはできません。しかし、書籍やSNSによる百田氏の発信について、異なる相手との複数の訴訟で賠償命令が出ている事実は軽くありません。とりわけ現在は、作家やインフルエンサーであるだけでなく、国会議員であり国政政党の代表です。発信の影響力が増した以上、その責任も重くなっています。

怨念系と呼ぶ前に事実で答えるべきではないか

批判に対して「逆恨みだ」「怨念だ」「擦り寄ってきたが受け入れなかった」などと返せば、支持者には分かりやすい物語になります。批判の内容を検討しなくても、批判者を信用できない人物として処理できるからです。

しかし政治家や政党代表に求められるのは、自分を批判する人物の内面を決めつけて、人格的に問題があったとポストすることではありません。批判に対して、事実と資料によって反論すべきです。相手の経歴や人間関係について具体的な事実を発信するなら、裏付けを確認する責任があります。影響力の大きな人物が作った物語は、支持者によって繰り返され、本人が否定しても容易には消えません。

百田氏は「擦り寄ってきた」という表現については「行き過ぎたかもしれない」と書きました。それでも投稿を削除して明確に訂正するのではなく、本間氏が熱烈に接近していたという説明を重ねました。そして今回、裁判所は百田氏に55万円と遅延損害金の支払いを命じました。

本間氏を「怨念系」と呼ぶ前に、批判には事実で答える。その当たり前の原則へ戻るべきではないでしょうか。

判決文をもとに本間奈々氏へ聞く

今回確認できたのは、百田氏に55万円と、2025年5月9日から支払い済みまで年3%の遅延損害金を支払うよう命じた主文と、本間氏のそのほかの請求が棄却されたことです。(そのほかの請求というのは、謝罪や事実でなかったことを認めることかと思われますが、これは判決文を見た上で本間さんの説明を待ちます。)

裁判所が二つの投稿のどの表現を違法と判断し、どの主張を退けたのかについては、判決文を読まなければ正確に説明できません。判決文が届いた後、YouTube「風読みサロン」に本間奈々さんをゲストとしてお招きし、判決文をもとに、ご本人から裁判の争点と判断についてお話しいただく予定です。どうぞお待ちください。

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