ネットリンチの現職自衛隊員の懲戒処分。(本人訴訟体験記 3)
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処遇改善が「侮辱」になる組織――懲戒2件が示した自衛隊内部の病理

著作に対しての継続的な誹謗中傷の一例
自衛隊奈良地方協力本部と陸上自衛隊伊丹駐屯地で、SNS上の誹謗中傷を理由とする懲戒処分が相次いで公表された。奈良地本では50代の1等陸曹が停職30日、伊丹駐屯地では40代の3等陸曹が停職40日である。いずれも面識のない相手をSNSで中傷し、名誉を傷つけたとされる事案だ。
この2件は、単なるネット上の感情的な言い争いではない。被害を受けた「一般市民」とされた相手は、いずれも自衛隊の処遇改善を訴えてきた私、小笠原理恵である。結果として、私に対するSNS上の誹謗中傷行為が問題となり、懲戒処分に至った事案である。
これは、一部の現職自衛官による問題だが、処遇改善への反発は一部の自衛隊員だけではない。
私は月刊Hanadaの対談において、元陸上幕僚長の岡部俊哉氏と議論を行ったが、その場でも同様の構図が見られた。
私は、少子化の中で自衛隊員の確保を維持するためには、処遇改善が不可欠であり、その仕事に見合った給与や生活基盤がなければ応募者は減り、中途退職も増えると指摘した。
しかしこれに対し、岡部氏は対談中を通して強い不快感を示し、「なぜ募集の時期にこうしたネガティブな内容を出すのか。応募が減るではないか」と主張した。
この認識は、SNS上で誹謗中傷を行った隊員たちの発想と重なるものである。
すなわち問題は、「現場の一部の隊員の問題」ではなく、組織全体に共通する思考構造にある。
この点については、The Letterの記事
「処遇改善が『侮辱』となる組織――自衛隊内部で何が起きているのか」でも詳述した。
自衛隊においては、ともかく入隊させればよいという発想が優先されやすく、入隊後に隊員が生涯にわたって働き続けたいと思える環境を継続的に整えるという視点が弱い。
結果として、隊員募集においては「数値目標の達成」や「組織の体面維持」が重視され、本来リクルートの根幹であるべき、
・その仕事が報われる職業であること
・家族を含めた生活設計が可能であること
といった、一般の就職において重視される要素への配慮が後回しにされている。
なぜ自衛官が集まらないのか。
その答えは、こうした構造の中にある。
懲戒となった自衛官や岡部陸幕長に共通する問題
伊丹駐屯地の事案では、その構図が比較的はっきりと報道にも表れている。報道によれば、3等陸曹はSNS上で自衛隊員の処遇改善を訴える投稿を見て、「自衛隊のイメージダウンにつながる内容と感じ、ヒートアップした」と説明しているという。つまり、生活環境や待遇の改善を求める発信そのものを「自衛隊の印象を下げる行為」とみなし、反論ではなく中傷で応じたのである。
奈良地本の事案でも、隊員は「被害者の著作の内容に対する反論や否定のために書き込んだ」と説明している。こちらもまた、問題提起の内容に対して冷静な意見表明を行うのではなく、個人攻撃に踏み込んだ末に懲戒処分となった。両事件は時期も内容も近く、共通する問題として検討するべき事案だ。処遇改善を求める言論に対し、一部の自衛隊関係者が強い敵意を抱くという、共通の土壌の上で起きたものと見るべきだろう。
労働法が適用される一般の職場では、不衛生な環境や壊れたままの水回り、制服の交換、残業・休日出勤が多く休みが滞るといった問題があれば、それは当然に「対処すべき課題」として扱われる。放置すれば、労働基準監督署の指導対象となり得るからである。
一般企業には労働組合もある。労働者の衛生環境や生活環境に問題があれば、組合が間に入って雇用者と話をしてくれる。この組合がその生活環境問題を提示しても、労働者側から「俺たちの職場を侮辱するな!」という抗議がでてくる可能性は低い。
また、一般的な労働者はその雇用環境と自分自身を一体化しない。働く場所自分自身とは別ものだ。だから、職場の問題提起に自分自身を侮辱されたかのような怒りはまず生じない。雇用者側の問題として、労働者はどうにかしてくださいという立場となる。
自衛隊待遇改善の敵は「組織内部の反発」
一方で、自衛隊は労働法の適用外に置かれている。そのため、同様の問題が存在しても、直ちに違法とはされず、是正が後回しになる構造がある。自衛隊内では問題について不満をいうことを問題視し、労働者側が我慢することが美徳であるという空気がある。
この記事は自衛隊の野外訓練に一時的な宿泊場所として使われる廠舎の不衛生さ、この数十年前の毛布もダニなどの虫がいてこれで眠ると皮膚が赤くはれる。とても安眠できない。自衛隊もこの廠舎に泊まることを嫌い天幕というテントをはって宿泊するが、ここに泊まらなければならないこともある。これをどうにかしてほしいと告発があり、私が記事を書いた。
この結果、国会で質問してくれる議員もいてこの廠舎はすでに取り壊され、新しい廠舎が建築予定となっている。改善につながったのだ。
しかし、誹謗中傷を行う一部の自衛隊関係者はこれに攻撃を始めた。ネットは自衛隊を侮辱している。平時の生活場所がこんな場所だと疑われる。反自衛隊だ。自衛隊への敬意がないとする元自衛隊員、現職自衛隊員、自衛隊関係者を名乗るアカウントからの攻撃があった。
自衛隊関係者以外の投稿は人間味溢れる温かいものだった。一般の読者は「これは改善しなくてはなりませんね。」「自衛隊員さんをこんな場所で宿泊させてはならない。国会議員の先生お願いします。」という好意的な投稿が多かった。もちろん、自衛隊内部での感謝の声も多かった。しかし、攻撃的な投稿は目立つ上に、彼らは連携し、お互いに先鋭化して攻撃をエスカレートさせた。
その廠舎やNHK受信料・電気代の徴取問題、異動費用の負担問題、高速道路使用の上限問題等の改善についても、一部の現職自衛隊員や元自衛隊員、関係者を名乗るアカウントからは、これを肯定的に受け止めるのではなく、問題提起が「自衛隊を貶める行為だ」と攻撃が見られた。「処遇を改善の要求や提示に攻撃して黙らせる」傾向があるから、劣悪な施設を自衛隊はこれまで改善することができなかったのだろう。しかし、まだその力は大きい。
自衛隊自身が問題を可視化し、変革に踏み出す覚悟と寛容さを持てるかが問われている。
公務員組織である自衛隊は、組織自らが内部環境に目を配り、不満が蓄積しないよう継続的に整備していく必要がある。労働組合が存在しない以上、現場からの問題提起に耳を傾け、それを改善につなげていく主体は組織自身にほかならない。
小泉進次郎防衛大臣は就任後、現場の声を積極的に聴き、処遇改善を進めている。こうした取り組みに対しては、少なくとも現時点では、組織内部からの攻撃的な反発は表面化していない。
だからこそ、自衛隊という組織の外側から影響力を持つ大臣や閣僚が、責任を持って処遇改善を推進していくことが求められている。
我慢させればいいという時代の感性をもっている一部の自衛隊員と元自衛隊員がSNSで集団で攻撃を繰り返す。私のフォロアーさんたち「怖いから投稿できない」と恐れていた。彼らは一般市民に対してのネットリンチが募集に悪影響だとは思わないのだろうか。
これを変えていくことが公的機関として求められる。
多くの入隊者は「国の組織である以上、内部もきちんと整えられているだろう」という期待がある。その認識とのギャップは小さくない。その結果、入隊直後の教育隊段階で離職者が出るという現象につながっている。
入隊者数の維持を優先し、問題提起を抑え込み、ジャーナリストを黙らせたとしても、入隊後にはその現象をみて離職者がでる。これを止めることはできない。
衛生環境や装備といった職場の基本的条件は、自衛隊自身が目を光らせて改修、改善するべきものだ。内部からの告発、外部からの指摘があれば、迅速に改善していけばいいだけだが、自衛隊内にはまだ指摘されれば侮辱と捉えて攻撃する意識が強い。自衛隊の価値観はまだその域にたどり着いていない。
「誰が指摘したのか」といった詮索や、問題提起への報復では問題解決にはつながらない。むしろ改善を妨げる要因となる。自衛隊にとっては目と鼻の先の自衛隊員募集さえうまくいけばいいのだろうか。
こうした構造は、見直されるべき段階に来ているのではないか。岡部陸幕長との対談で私が訴えたことは、処遇改善をすすめず内部の問題を隠蔽して人材募集が成功しても、入隊後に中途退職してしまう。
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自著 「こんなにひどい自衛隊生活」をぜひ読んでみてください。
自衛隊内の生活待遇の問題を明らかにして、改善してきた歴史です。
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